【涙の正体って?】目にとって重要な涙の役割やメカニズムを解説
嬉しい時や悲しい時など、自然と溢れてくる涙…でも、涙が出てくるのはこんな特別な時だけではなくて、実は常に出ているものなんです。
涙は、目の機能維持や保護のためには無くてはならないものです。欠乏すると、ドライアイや眼精疲労のみにとどまらず、様々な疾患の原因にもなります。
ですから、涙についてしっかりと理解をしておくことはとても大切ですね。今回は、この涙の事について詳しく取り上げてみたいと思います。
涙の役割
涙は、目が正常な働きをするためにとても大切な役割を担っています。
その役割を、6つに分類してみましょう。
その1.目を外界から守り、乾くのを防ぐ
何と言っても、涙の一番の役割はコレです。目はとても繊細な器官であるにもかかわらず、瞼を開いている間は直接外界に晒されている事になります。その目の表面を覆うのは涙の膜みなのです。
その2.目の潤滑液
眼球を動かしたり、まばたきをしたりする時、潤滑剤がないとひっついて動けませんよね。涙は、この潤滑の役割を担っています。
その3.視界をクリアにする
視覚情報の入り口である角膜(※黒目の部分)の表面を顕微鏡で見てみると、結構凸凹しているのがわかります。これは、マイクロビライトという絨毛(じゅうもう)があるためです。
カメラのレンズの役割にあたる角膜は、表面が滑らかで透明でないとクリアな視界を確保することが出来ません。涙は角膜の表面に乗ることで、レンズをなめらかにしてクリアな像を取り入れるために一役買っています。
車にワックスをかける事で、細かいキズが目立たなくなる事にも似ていますね。
その4.目にゴミが入った時に洗い流す
目にはチリやホコリ、花粉や煙などの様々なゴミが入ることがありますね。それを洗い流す役割もあります。また、角膜は代謝を繰り返して、常に新しい細胞に生まれ変わっています。その老廃物を洗い流すのも涙なのです。
その5.バイ菌から目を守る!
涙には、殺菌をする様々な成分も含まれています。バイ菌は、体中の粘膜から侵入を試みようとします。目において、そんなバイ菌たちが侵入しないよう防御する役割を持っているのは涙なのです。
その6.角膜に栄養や酸素を行き渡らせる
細胞が活動をするために必要となる栄養や酸素を運ぶ働きをしているのは、本来なら血液です。しかし、角膜には血管がありません。そのため、血液に変わり栄養と酸素を運ぶという重要な役割を担っているのは涙なのです。
涙の種類
涙の出方には、反射性の分泌と基礎的分泌の二つの種類があり、涙を出す主涙腺は主に副交感神経を中心として三叉神経・交感神経に支配されて作用しています。
反射性分泌の涙
主に感情によって作用するものです。
例えば、念願が叶って嬉しい時。大切な人が亡くなったりして悲しい時。いい映画を観て感動した時。画鋲を踏んづけて痛い時、などなど…
これら、様々な感情によって反射的に分泌される種類の涙が、反射性分泌の涙と呼ばれています。
これらの感情によって涙を流すのは、人間だけと言われています。
基礎的分泌の涙
私達が起きている間、意識せずとも常に自然に分泌しているのが基礎的分泌の涙です。
前項で説明した涙の役割のうち、目の保護・潤滑・栄養運搬・視界向上・殺菌の大部分は基礎的分泌による涙によって賄われています。
基礎的分泌の涙の量は、通常は一日に0.7~3mmリットルといわれており、起きている間は常に分泌され続けています。
分泌量は9歳の頃がピークになり、その後加齢とともに減少していきます。また、女性の場合は、月経などによるホルモンバランスによっても分泌量は影響されるようです。
涙はどこから出てくる?
もちろん涙は涙腺を通って出てくるわけですが、この涙腺にも幾つかに分類されます。
■主涙腺
漿液腺:眼窩部涙腺と眼瞼部涙腺に分かれています。涙の排出口はまぶたの裏側のこめかみ寄りに約50個あり、瞬きのタイミングで少しずつ涙が出るようになっています。
■副涙腺
クラウゼ腺:まぶた裏の一番奥にあり、排出口は約40個あります。
ウォルフリング腺:まぶたの縁近くに数個あります。
通常の基礎的分泌では、これらの分泌腺からまばたきのタイミングで涙が排出され全体に行き渡るようになっています。
泣いたりした時にまぶたが腫れたようになってしまうのは、反射性分泌によってこれらの涙腺から一気に大量に涙液が出るため、涙腺にダメージがかかるからのようです。
涙はなぜ溢れない?一体どこへ行くの?
基礎的分泌により常に出ている涙ですが、では、なんで溢れてしまわないのでしょうか?
目の中をよく見てみると、目頭の近くの上下に穴があるのがわかりますか?
涙の一部は角膜の上で蒸発しますが、残りはこの穴に入っていきます。この穴から管(涙小管)を通り涙嚢に格納された後、鼻涙管を通って鼻の中に向かいます。
目薬を点した時に口の中に苦味を感じることがあるかと思いますが、この仕組のためです。更に鼻と口は奥でつながっているため、目薬の味を感じることがあるわけなんですね。
涙の構造と成分
涙は3層の構造に分かれています。
一番角膜に近い層が粘液であるムチン層(粘液層)、その上にあるのが主な成分である水分の層(涙液層)、そして一番外側が脂分である油層です。これらの成分の約98%は水から成り立っています。
■ムチン層
主成分である涙液層が目に張り付いていられるようにするための層です。
■涙液層
メインとなる涙液の層です。この涙液層は、血液の血漿(けっしょう)とほぼ同じような成分で構成されています。
主に、タンパク質・糖蛋白・糖質・酵素・塩素・尿素・電解質・ビタミン等でできており、その中には、リゾチーム・ラクトフェリン・ベータリジン・グロブリン・アルブミン・インターフェロン・ナトリウム・カリウム・フィブロネクチンが含まれています。
■脂層
涙液の無駄な蒸発を防いだり、こぼれ落ちないようにコーティングしているのが、一番外側にある脂の層です。
ワックス・コレステロール・レシチン・エステル等から出来ており、マイボーム腺やツアイス腺から排出されています。
涙と目薬
これらの成分、どこかで目にした記憶はありませんか…?そう!目薬のパッケージにも同じような成分が記載されていますよね。
涙は天然の目薬なのです。本来なら、涙だけでも目の機能保全や修復、殺菌などに十分な役割を持っているはずなのですが…あえて、これらの不足を補ったり強化するために目薬を使う場合は、できるだけ本来の涙の機能を阻害しない物が望ましいです。
防腐剤や界面活性剤成分等が入っている物は、本来の涙の構造を乱すリスクもあるため、できれば医師の指示を受け、それぞれの症状に見合った最適な目薬を処方してもらう方が良いでしょう。
☑まとめ
このように、涙は目の機能維持においてとても大切な役割を持っています。どうしても少し難しい話になってしまいましたが、この涙の機能不全は、目に様々なトラブルを引き起こす事になるというのは、なんとなく想像がつきますでしょうか?
涙に関する疾患には、涙腺炎や、シェーグレン症候群などがありますが、マイボーム腺の機能不全などは、ものもらいやドライアイにつながりますし、慢性化すると眼精疲労へとつながったり、精神的疾患につながったりする事もあるので要注意です!
目の健康維持のためには、まずはこの涙がしっかりと仕事ができるように、その環境を保っていく必要があります。
対処療法だけでなく、普段からそのような環境を作って行けるような体調管理と習慣づくりが大切です。
そして、目のトラブルでは甘く考えずに、たとえわずかな兆候だったとしても医師に相談し判断を仰ぐようにしましょう。